AI検査とルールベース検査の違い|状況別の使い分け早見表つき

AI検査とルールベース検査の違い|状況別の使い分け早見表つき

この記事の要約
  • 良否を数値や条件式で書ける検査は、ルールベースの領域です
  • 出方が一定しない欠陥・言語化できない判定は、学習ベースの領域です
  • 両方式を工程で組み合わせるハイブリッド構成が有力な選択肢です。解けないときは撮像・照明を見直します

丁寧に見れば時間がかかり、ラインに合わせて急げば見逃しが出る。外観検査の現場では、この二つがなかなか両立しません。判定は検査員の熟練度に左右され、人が代われば基準もぶれていきます。

そこで「そろそろ自動化を」となるわけですが、調べ始めると目に入る情報のほとんどが「AIで解決」に見えてきます。

ところが実際の現場には、AIを使わずに解ける検査があります。逆に、条件をどれだけ書き足しても人の目に追いつかない検査もあります。

当社は実装基板検査ソリューションを提供していますが、その名称にあえて「AI」を入れていません。AIは必要に応じて使う手段であり、判定はAIとルールベースを使い分けるものだと考えているためです。

使い分け早見表:ルールベースが得意なこと、AIが得意なこと

どちらの方式が向くかは、検査の性質でおおむね決まります。

それぞれの得意な検査から、自社に近い項目を探してください。

ルールベースが得意な検査

良否の基準を、数値や条件式で書ける検査に向いています。正解となる基準が決まっていれば、人が判定条件を設計できます。

例えば、こんなケースです

  • 寸法測定・公差判定校正した幾何演算で数値が出ます。輪郭抽出だけ学習ベースにする併用もあります
  • 部品の有無・欠品位置が固定され、背景とのコントラストが安定していることが前提です
  • 位置ずれ・位置合わせ基準特徴が毎回安定して写れば、再現性の高い位置合わせを設計しやすい方式です
  • 数値で定義できる色判定照明・露出に加え、色の校正まで固定できることが前提です。厳密な色差は色差式(CIEDE2000等)で扱います
  • 基準画像・設計データとの比較(印刷・パターン検査など)正解となる基準が画像やデータで存在する検査は、基準との差分としきい値で設計できます。位置合わせと撮像条件の安定、正常なばらつきの許容範囲の設定、版替え・品種切替に合わせた基準の更新が前提です
  • 判定根拠の説明責任が重い検査(監査・顧客報告)判定に使った数値としきい値をそのまま提示できます
AIが得意な検査

良否の基準を、言葉や数式にしにくい検査に向いています。出方が一定しない欠陥や良品のばらつきを、判定例や良品のみの画像から学習します。

例えば、こんなケースです

  • キズ・汚れ・色ムラなど不定形の欠陥出方が一定しない欠陥に有効です。欠陥が画像に写る撮像設計が前提です
  • 良品に個体差・ばらつきがある対象(食品・天然素材など)固定しきい値では書きにくい良品のばらつきに、学習が合うことがあります。想定するばらつきを学習データに含められることが前提で、ばらつきが大きいほど微小な欠陥の見分けは難しくなります
  • 「熟練者は分かるが言語化できない」判定判定例を集めて学習に落とせます。着手前に、複数の検査員で判定が一致するかの確認が前提です
  • 位置や背景が安定しない対象の有無判定位置が定まらない・部品と背景が同系色といった条件が重なる場面では、学習ベースが有利になることがあります
どちらか一方では決まらないケース
  • 多品種・頻繁な品種切替二択では決まりません。当社は、品種をまたいで共通の特徴を学習できるか(背景・倍率・照明の条件差を揃えられるか)で判断しています
  • 照明・環境が安定しないどちらを選ぶかより、撮像を直すのが先です
  • 変形・反りの検出明暗の画像(2D)に現れにくい場合は3D撮像の検討領域です。3Dデータにも両方式を適用できます

▶ 自社の検査がどちら向きか、切り分けの整理から相談する

結論:決め打ちが遠回り — 違いは「人が設計するか、学習させるか」

外観検査の方式は、対象を見る前に決めてしまうと遠回りになります。

単一の検査項目なら、どちらか一方で完結することもあります。ただし方式は、新しいか古いかではなく対象の見え方で決まります。データの集めやすさ・検査時間・説明責任も判断の条件です。

二つの方式の違いは、良否の判定条件を人が明示的に設計するか、データから学習させるかにあります。

ルールベース検査は、人が判定条件を数値で決める方式です。判定に使った数値としきい値をそのまま提示できます。

AI検査は、判定例や良品のみの画像から特徴を学習させる方式です。着目箇所は示せますが、因果の証明ではありません。

ルールベース検査 人が条件・しきい値を設計 数値で判定 根拠を提示できる AI検査(学習ベース) 画像から特徴を学習 判定 着目箇所は示せるが 因果の証明ではない
図解①:判定の決まり方の対比
ルールベース検査 人が条件・しきい値を設計 数値で判定 根拠を提示できる AI検査(学習ベース) 画像から特徴を学習 判定 着目箇所は示せるが 因果の証明ではない
図解①:判定の決まり方の対比

実際の工程では、1台の装置の中で両方式を組み合わせる構成も設計できます。

7つの質問で分かる判断フロー

自社の検査がどちら向きかは、当てはまる項目にチェックを付けるだけで大枠が見えます。

Q0. 欠陥は画像に安定して写っているか No 撮像見直し型 Yes Q1. 良否の基準を数値・条件式で書けるか 書ける 混在 書けない Q2 ばらつきが小さい Q6 説明責任が重い 書ける項目と 書けない項目が混在 Q2 ばらつきが大きい Q3 判定例を集められる ルールベース先行型 ハイブリッド型 AI先行型 方式を絞った後の設計条件 Q4. 品種数と切替頻度 Q5. 1個あたりに使える検査時間
図解②:7つの質問の判断フロー
Q0. 欠陥は画像に 安定して写っているか Yes No 撮像見直し型 Q1. 良否の基準を 数値・条件式で書けるか 書ける Q2 ばらつきが小さい Q6 説明責任が重い ルールベース先行型 混在 書ける項目と書けない項目が混在 ハイブリッド型 書けない Q2 ばらつきが大きい Q3 判定例を集められる AI先行型 方式を絞った後の設計条件 Q4. 品種数と切替頻度 Q5. 1個あたりに使える検査時間
図解②:7つの質問の判断フロー

まず、前提の1問です。

ここにチェックが付かないなら、方式を比べる前に撮像(カメラ・照明・分解能)の見直しが先です(撮像見直し型)。

チェックが付いたら、次のA・Bそれぞれで、当てはまるものすべてにチェックを付けてください。

A. ルールベース寄りのサイン

B. 学習ベース寄りのサイン

チェックの付き方で、型の目安が分かります。

チェックの付き方型の目安
Q0にチェックが付かない撮像見直し型 — 方式より先にカメラ・照明・分解能を直します
Aに2個以上(Bは1個以下)ルールベース先行型
Bに2個以上(Aは1個以下)AI先行型
AとBの両方に2個以上ハイブリッド型 — 検査項目ごとに方式を分けます

※Bに多くチェックが付いても、Q3(サンプル)が空欄の場合は、先に不良サンプルの確保から検討します。

Q4(品種数と切替頻度)とQ5(1個あたりの検査時間)は、方式を絞ったあとの設計条件です。どの型か迷う場合は、対象を絞った小さな検証で確かめます。

境界となる具体的な数値は対象と工程で大きく変わるため、本記事では示していません。

工程で組み合わせる「ハイブリッド構成」— 処理の並びで見る

実際の検査装置では、得意な処理を工程順に並べたハイブリッド構成が有力な選択肢になります。

  1. 位置決め(ルールベース):形状マッチングで基準位置を合わせる
  2. 寸法・有無の判定(ルールベース):数値で書ける項目を先に確定させる
  3. 不定形欠陥の候補検出(AI):キズ・汚れなど言語化しにくい項目を拾う
  4. 人の最終確認:AIが挙げた候補を人が見て確定する

当社もEMS企業様向けに、スイッチ設定値の読み取り検査を自動化しています。はんだの実装検査では、疑わしい箇所を赤くハイライトして示し、合否の最終判断は人が行う設計です。

当社の実装基板検査ソリューションは、こうした判定の中でAIとルールベースを使い分けています。

AIが合否を決めるのではなく、人の確認を助けるという考え方です。

▶ 関連: 同一部品の個数を数える数量カウントも、対象の写り方に応じて両方式を使い分けています

ハイブリッド構成で外せない設計上の注意

  • 位置決めに失敗した個体はNGにせず、「判定不能」として別に排出します
  • AIの候補だけを人が見る運用では見逃しが人に届きません。過検出側に振るか抜き取り検査を併用します
  • 処理時間は、各段の合計がタクトに収まるかを工程を並べた状態で確認します
  • どの段でNGになったかを記録します。後工程の改善につながる情報になります

どちらを選んでも解けないケース — 先に撮像・照明を直す

そもそも画像に写っていない欠陥は、AIでもルールベースでも検出できません。

分解能が足りない、照明の当て方で欠陥が背景に埋もれている、光沢面の反射で白飛びしている。こうした状態では、どちらのアルゴリズムでも結果は変わりません。単一露光でセンサーが飽和(白飛び)した領域の元の輝度や模様は、通常の後処理から一意には復元できないためです。

当社では、方式を比べる前に撮像・照明を直すのが先だと考えています。

精度が出ないときの原因の切り分けは、AI検査で精度が出ないとき、最初に疑うのは撮像・照明で詳しく解説しています。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 今あるルールベースの検査機に、後からAIを足せますか

最初の確認点は、検査に使っている画像を外部に取り出せるかです。取り出せない場合や、圧縮で劣化した画像しか出せない場合は、カメラと照明を別に立てるほうが結果的に早いこともあります。

構成としては、既存の判定はそのまま残し、AIを追加の判定段として並列に流して評価する(シャドー運用)形が、比較的段階導入しやすい進め方です。

Q. AIとルールベース、費用はどちらが高いのでしょうか

金額は対象と規模で変わるため一概には言えませんが、費用の構造が違います。

  • 初期:ルールベースは条件設計・調整というエンジニアリング工数が中心。AIはデータの収集・整理と学習環境の準備が中心です
  • 運用:ルールベースは品種追加のたびに条件の再調整が必要になりやすい方式です。AIも新しい欠陥や品種が増えれば再学習が必要になる場合があります。どちらも「作って終わり」にはなりません

見落とされやすいのは、AI側の費用でデータ収集と運用体制が大きな比重を占めやすい点です。

学習にはGPUを使うと時間を短縮しやすくなります。一方、現場での推論は軽量なモデルであればCPUで成立する場合もあります。これは、要求される検査時間に対する実測確認が前提です。

なお、3Dセンサや複数カメラを使う構成では、ハードウェア費用が大きくなることもあります。

次の一歩

外観検査の自動化は、方式を決めるより、自社の検査がどちらの性質を持つかを切り分けることが先です。

  1. 早見表で、自社の検査に近い状況に当たりをつける
  2. 7つの質問で、どの型に近いかを確認する
  3. 迷う項目が残ったら、切り分けの整理からご相談ください

初回のご相談では、図面や機密情報のご提出は不要です。具体的な可否判断の段階で、必要に応じて画像や図面を個別にご相談します。

検査対象と現在の判定方法、お困りの点をお聞かせいただければ、方式の当たりをつけるところからご一緒します。

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